嘘発見器

八神 私は、女です。

(ビーッ!)

綿谷 ・・・今、僕は八神くんの家にいます・・・おぉ、鳴らないな?

八神 本当のことだからな・・・綿谷は正直なやつです。

(ビビーッ!)

八神 ・・・高性能だろ?この嘘発見器。

綿谷 そうだねえ、パッと見だとスマホと何ら変わりが無いな・・・ってか今の反応がめちゃくちゃ良かったんだけど?

八神 ああ、嘘つきだからだろ?この間だって「ツチノコを見た」とか時代遅れの嘘つきやがって。

綿谷 本当だって!ツチノコがいたんだって!

(ビーッ!)

八神 こいつぁ、嘘をついてる音だぜ・・・しっかし、遊びとはいえ俺もこんなものが作れるとはなぁ・・・。

綿谷 え!?これって手作りなの!?大学の研究室で!?

八神 ああ。人の声の振動の仕方の違いって言うのかな?それが嘘をつくときに微妙に変化するんだよな。それをマイクがキャッチして、音が出るってわけ。

綿谷 すごいなあ!!え?これを大量生産とかして、一攫年金みたいなこと考えてるの?

八神 一攫千金だろ?これ以上年金のトラブルが起きたらえらいことになるぜ・・・ていうか、もしこんなものが町に溢れたらどうなるか考えてみろよ?

綿谷 え・・・あぁ〜、どんな些細な嘘にも反応するみたいからねえ。きっと町はうるさくなっちゃうよね。とっても姦しくなるよね。

八神 喧しくなるんだろ?なんだか嫌だろ姦しい町って。

綿谷 うん・・・あ、一つお願いがあるんだけど・・・?

八神 ん?金なら貸さないけど・・・。

綿谷 いや、過去にそんなトラブル無かったよね?

八神 じゃあ何だ?

綿谷 あのさ・・・その発見器、貸してくれない?すぐに返すからさ。

八神 何に使うんだよ?

綿谷 べ、別に何にも使わないんだからね!?

(ビーッ!)

八神 何故にそんな喋り方か?ちゃんと話せって。

綿谷 実はさぁ、バイト先にすっごく可愛い子がいるんだけどさぁ・・・その子が僕のことどう思ってるのか知りたくて・・・。

八神 ・・・鳴らないな・・・。

綿谷 駄目かな・・・?

八神 別にいいよ。好きな女の子の気持ちを、知りたいって、いうのは、健全な男なら、考えることだし、これに、頼りたい、ってのも、納得、だ、よ。

(ビーッ!!)

綿谷 ・・・今の嘘は発見器が無くても見破れたよ。

八神 お前なあ、こんなもんに頼るような男に女がほれると思うか?

綿谷 思うよ。

(ビーッ!)

八神 もっと自分に素直になれよ。

綿谷 なってるよ!僕=素直っていうのは有名でしょ!?

(ビビーッ!)

八神 これに頼るのはただのビビリだぜ?

綿谷 違うね!ビビリなんかじゃないね!!

(ビビリーッ!!)

八神 もう発見器にもビビリって言われてるし・・・こんな機能つけた覚えがないんだけどな・・・。

綿谷 くっ!

八神 その子の事好きなんだろ?だったら自分に素直になって、ぶつけてこいよ!その熱い思いをよ!

綿谷 何そのキャラ?

八神 この時点で「素直になってる」のは発見器だけだぞ?

綿谷 ・・・。

(ビビーッ!)

八神 何で誰も何も喋ってないのになったんだ・・・?

綿谷 ・・・あ、音が「鳴ってる」と素直に「なってる」がかかってたのか・・・。

八神 気づくの遅えな。機械より反応できてねえよお前。

綿谷 まあ鳴ったのは・・・八神くんがスベったのをフォローしようとしたんじゃない?

八神 機械にフォローされるとは・・・とにかく、これに頼っちゃ駄目だぜ?女ってのはなあ、嘘をつく男を嫌うんだよ。

綿谷 ・・・分かった・・・次のバイトで素直に聞いてみるよ。

八神 おう、頑張れよ。

綿谷 うん!・・・あ、テレビつけていい?

八神 え?あぁ、いいけどどうしたんだよ?

綿谷 この時間にお笑い番組やってるんだよね!僕毎週見てるからさ!

(ピッ)

二人 ・・・。

綿谷 ぶっ・・・くくく!

八神 いや、ごめん、この番組面白いか?

綿谷 だって、ネタ中にCM入ったりするんだミワのぐずぐず感がゴールデンでやってるなんて貴重だよね!

八神 はぁ・・・そういうもんかねえ?

二人 ・・・。

(ビーッ!)

綿谷 え?今のは何に反応したんだ!?

八神 あ〜、このVTRのおっさんの発言に反応してるんだな。

綿谷 えぇ!?テレビで言ってることも嘘か本当か分かるの!?

八神 しゃべってるのは人間だからな。

綿谷 まあ、ネタ番組だから、「セリフ」であって「本当のこと」は喋っていないんだね。

八神 そうだな・・・いや、今新聞見たんだけど、この番組ニュースって扱いになってるぞ?

綿谷 あ、これニュース番組だったんだ。

八神 いやいやいや!ニュースで嘘垂れ流しとかだめすぎるだろ!そんでお笑い番組に間違われるクオリティーの低さが見て取れる!もう消そうぜ!

(ピッ)

(ピリリリリ・・・・ピリリリリ・・・・)

綿谷 今度は何に・・・あ、電話か・・・八神くんの。

八神 ん・・・ミワからか・・・。

(ピッ)

綿谷 いいなあ八神くんは・・・ミワちゃんみたいな可愛い彼女がいて・・・。

八神 もしもし〜?・・・おう・・・え?明日?・・・明日はちょっと会えないなぁ〜・・・いやな、大学のサークルがあるんだよ。

(ビーッ!)

綿谷 え?反応した?

八神 明後日?・・・明後日はバイトあるからなぁ。

(ビビーッ!)

綿谷 また!・・・これって、八神くんの台詞に反応してるんだよね・・・?

八神 うん・・・うん・・・じゃあさ、俺の都合が付いたら折り返し電話するから。

(ビーッ!!)

綿谷 いや、電話しないの!?

八神 え?・・・何を馬鹿なこと言ってるんだよ?お前以外に女をつくるわけ無いだろ?

(ビビーッ!!)

綿谷 ちょ、八神くん!ミワちゃんの他に彼女いるの!?

八神 うん・・・うん・・・ちょっと待ってて。(おい!あんまり騒ぐな!向こうに声が聞こえるだろうが!)

綿谷 (そんな事言ったって!え?うそ?他に女の子いるの!?)

八神 (寄ってくるな!あっち行ってろ!)

綿谷 (本当のこと言ってよ!)

八神 もてないやつが指図するなぁ!!

綿谷 グハッ!

八神 もしもし・・・あぁ、何でもないよ・・・ちょっともてないやつが邪魔してきて・・・そうそう、綿谷が。

綿谷 ・・・何でもてないやつで僕って伝わるんだよ・・・?

八神 うん、じゃあな・・・え?ああ、愛してるよ。

(ウソで〜す!)

綿谷 あ!また発見器が反応した!っていうか喋った!!

(ピッ)

二人 ・・・。

八神 俺、帰るわ。

綿谷 いきなり何言ってんのさ!?

八神 いや、その・・・な?あれがあるんだよ?な?

綿谷 あれって何だよ!?大体帰るってここ八神くんの家だし!!

八神 ・・・これ、捨てようかなぁ・・・今の奴といいビビリの件といい、しゃべる機能なんてつけてねえし。

綿谷 確かにあれにはびっくりしたなぁ・・・って、誤魔化されないぞ!ミワちゃん以外に彼女いるの?!

八神 うぅん。

(ビー!)

綿谷 ・・・二股してるってことか・・・。

八神 まあ・・・この際だから言っとくけど・・・ミワの他に女がもう一人いる・・・。

(ビーッ!)

綿谷 ・・・今のはどこに反応したんだよ!?・・・もしかして、女ってところ?

八神 そこに反応したら男好きってことになるだろ!?

綿谷 じゃあ、もう一人ってところだな!?

八神 違えし!そこじゃねえし!

(ビーッ!)

八神 ぐほぉ!!

綿谷 自分で作った機械に翻弄されている!ってことは・・・他に女の子が何人もいるってこと?

八神 ・・・。

綿谷 何か言えよ!

八神 ここで違うってしゃべったら鳴るだろうが!

綿谷 はい、自滅〜!

八神 くそったれがぁ!!

綿谷 ・・・「女ってのはなあ、嘘をつく男を嫌うんだよ」って・・・。

八神 誰にも言わないでくれ・・・頼む・・・特に俺と関係を持ってる女には!

綿谷 ・・・他の女の子のが誰かが分かんないし。

八神 ミワ以外にはテルミにアイにメイ、ジュンコにモモ、ハルカとカエデにユウコにマホ、マキ、リカ、ヒバリ、ナナの12人・・・あぁー!

綿谷 全員言っちゃった!

八神 ・・・どうよ?

綿谷 うわ、そのドヤ顔引っ叩きたい・・・全部で13人の女の子ひっかけてんのか・・・。

八神 ・・・で、黙っててくれるか?

綿谷 ・・・1つだけ・・・条件がある。

八神 条件・・・。

綿谷 ・・・そのうちの1人を・・・僕に譲ってくれ。

八神 最低だな!!

綿谷 お前が言うな!





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